Under The Darkness

 私達取材班は、中国のほぼ全域の農村や都市部を、金城さんや栞ちゃんともに、その土地土地の人間を中心に、写真に収めながら旅を進めた。


 途中悠宇とも何度か合流して、金城さんにしつこく構われながらも、悠宇の撮影が同時進行で進められたりもした。


 日本では、悠宇はもう立派な芸能人として活躍しているらしく、今やドラマの主役もこなし、来年には映画の主役にも抜擢されたんだって。

 もちろんその写真撮影は金城さんが買って出たんだが。

 金城さんは日本での仕事もあったから、日本と中国の行き来を何度もしていたんだけど、私は日本へは一度も帰らず、現地に残り一人で写真を撮り続けた。

 私は中国を離れた後も、ベトナムやラオス周辺にまで足を伸ばし、撮影をズルズルと延長し続けた結果、日本を離れて五年半という月日が流れていた。

 気が付いたら、私は二十四歳になっていたんだ。


 昔は生っ白かった身体も、今は小麦色に日焼けたりして、自分では凛々しくなったかな、なんて思ってる。

 日本を離れて寂しいとあまり感じなかった原因として、最低半年に一度は、何故か京介君が私の行く先々に出没したからってのもある。

 居場所なんて言ってないのに、いきなり現れる。

 それも、的確に。


 国際電話では何度もやり取りはあったんだけれど、それでは満足しなかったようで。

 京介君はやってくる度に私を困らせたんだけど、それも仕方ないことなのかな。京介君の性格上。


 ――――それと、一つ。


 私は京介君のことで、一つだけ、どうしても気になることがあった。

 それは、私が日本を離れて四年程経った頃、日本から数冊の新聞が送られてきたことがきっかけだった。

 差出人は悠宇だった。


 ――――新聞には、写真付きで事故死した男の写真が掲載されていた。


 高速道路のガードレールに突っ込んだ飲酒運転による事故死、と言う内容の記事だった。


 でも、それだけではなかったんだ。


 その後、続くようにして、私に乱暴しようとした沢渡会の男達、生き残った3人が不審死を遂げていた。

 そして、田口組元組長である豪の祖父と、若頭だった彼の父親。

 彼らが行方不明になった3年後、重しを付けられ琵琶湖に沈められた身元不明の遺体が2体、発見された。
 DNA鑑定の結果、この2遺体は親子で、50代と70代の共に男性であると断定された。
 新聞では、両遺体ともに、生前、指を複数切り落とされた痕跡があったことから、暴力団同士の抗争に巻き込まれた末の結末ではないかと推測する記載もあった。


 この記事を見た時、私の脳裏に京介君の顔が浮かんだ。



 京介君が何らかの行動を起こしたんじゃないかって。

 京介君は法学部在学中に司法試験に合格し、大学に通いながら、お父さんの顧問弁護士の元で経験を積むため、バイトをしながら卒業して。

 その後すぐ、バイト先だった川口組系魁龍会の顧問弁護士の元で働き始めた時期、つまり、川口組の深部にまで京介君が入り込んだ時期。それと合致していたから。

 それに、入院中、田口組の親子には報復したとも語っていた。

 でも、私は恐くて詳細は聞けなかった。


 ――――報復のために、京介君が殺したの?


 違うと信じてたい。

 でも、京介君の性格上、絶対ないって、私は否定も出来なかった。

 本当に単なる偶然かもしれない。けれど、一度生まれた疑念はそう簡単には消せなくて。

 京介君に会った時、直接確認しようとずっと思ってたんだ。



 溜息をつきながら、私は機上の窓から外の景色を眺めた。


 地上に近づくにつれ、近代的なビルが所狭しと立ち並ぶ様が目に映る。

 今までいた場所とは全く違う風景。 

 やっぱりここは近代的な都市、先進国なんだなと感心してしまう。


 ――――私は今日、五年半ぶりに日本へと戻ってきた。




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