この恋、国家機密なんですか!?
避難所になっているホテルは、都内でも有名な高級ホテルだった。
こういうところはスタッフもプロばかりでしっかりしていて、不審者はなかなか入ってこられないはずだから。
宴会場は古くなって改装中とのことで、今は使っていない。
そういうところが偶然見つかって良かったと、高浜さんが言っていた。
「はい、ここでひとまず休憩です。荷物を置いたらお弁当を取りに来てくださいね。貴重品は手放さないようにしてくださーい」
堅苦しい説明の前に昼食となって、奥様方はいくらかホッとしたようだった。
きちんと列に並んで、質素なお弁当と温かいお茶を受け取っていく。
「さすが添乗員さん、慣れてますね。というか、お見事です」
高浜さんがそばにきて、私の仕事ぶりをほめてくれた。
「ありがとうございます。バイト代はいくらでしょうか」
「あはは、篠田にたっぷり振り込ませておきますよ」
それは名案。
二人で笑いあっていると、ひとりの若い女性が、小さな女の子を連れてやってきた。
「あのう、お手洗いに行きたいのですが……」
「それでしたら、こちらを出て右手に……」
いつものように案内しかけた私に、高浜さんが一言。