この恋、国家機密なんですか!?
「今女性SPがご案内しますので」
その言葉の通り、宴会場の入り口にいた女性のSPが、柔らかい笑顔で近寄ってきた。
すらりと長い手足を持つその人は、質素なパンツスーツを着ていて、髪はひとまとめにされている。
「カッコいい……」
彼女は親子を連れて、トイレに案内していった。
そうだ、今は非常事態。
ただの添乗員(しかも休職中)がでしゃばっていい場合じゃなかった……。
ちょっと恥ずかしくなってうつむいていると、高浜さんが苦笑した。
「警察の方って、本当に大変ですよね。添乗員は楽な方です」
「そんなことありません。どんな仕事だって大変だし、誰かの役に立っているはずですよ」
高浜さんはそう言って微笑むと、私の分のお弁当をくれた。
「手伝わせてしまってすみません。どうぞ、唯さんも休憩してください」
そういうと、忙しそうにどこかへ走っていってしまった。
休憩……いつもひとりだから、それは良いんだけど。
奥様方はいつの間にか、いくつかのグループに別れていて、「この度は本当に大変なことになりましたね……」と話しながら、お弁当を食べていた。