この恋、国家機密なんですか!?
「添乗員さん、どうかしましたか?鼻の穴が開いてますよ?」
「はっ!!」
お客様に心配され、私は呼吸を整える。
「だ、大丈夫です。うふふ」
無理に笑っていると、間もなくエレベーターが目的の階について、止まった。
ガラス張りの展望デッキの外は晴れていて、水色の空間の中で、お客様たちは「ほぉ~」と小さく歓声を上げた。
地上600mくらいあるもんね、ここ。
お客様たちは、それぞれ散らばっていく。
彼らの背中を見守りながら、脳裏にさっきの光景が浮かんでは消え、浮かんでは消える。
大丈夫大丈夫、こんなところに宗一郎さんがいるはずないよ、うん。
だって今は深刻な事件の捜査に関わっているはずだし、浮気している余裕なんか……。
……浮気?
違う!
私、今は宗一郎さんの彼女じゃないんだったー!
「あああぁぁ……」
「……添乗員さん、何か悩んでいるみたいねえ……」
「きっと高所恐怖症なのよ……」
いけない、頭抱えてる場合じゃなかった。
お客様に心配をかける(というか、不気味がられる)なんて、絶対ダメだ。
私はいったん宗一郎さんのことを頭から無理やり追い出し、作り笑顔に切り替えた。