この恋、国家機密なんですか!?


今回のツアーのお客様は、農協の「年金友の会」のメンバーらしい。

顔見知りのジジババばかりのようで、彼らはほとんど固まって行動していた。

監視しやすくて、ありがたい。


「添乗員さん、せっかくだから展望デッキに行きたいわ」

「はい、では皆さん一緒に向かいましょうか」


私はエレベーターにお客様を分けて載せ、自分も展望デッキに向かう。

その間、ガラス張りのエレベーターから、途中の階にあるお土産屋さんやカフェをぼんやり眺めていた。

……のだけど。


「あれっ?」


あるカフェの前で、見たことのある後姿を見つけた。

シンプルな黒いコートに、グレーのパンツ。

あの服、宗一郎さんが京都で着ていたのと似てる。

やだ。また幻覚かな。

そう思うのに目は離せなくて。

その男の人の横に視線をやると、胸がどくんと跳ねた。

……彼の隣には、女の人がいたから。

若そうで、髪が茶色くて、背の小さい後姿。

彼女にそでを引っ張られて振り向いた彼は、そっとその小さな手をとる。

黒い短髪に、すっとしたつり目を持った彼……。

まさかと思って、壁際によるけど、その姿はすぐに見えなくなってしまった。


「宗一郎さん……?」


まさか。
まさか。

だけど、似すぎている。


……こんなとこで何してんだぁぁあいつはぁぁぁぁ!?



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