この恋、国家機密なんですか!?


高浜さんは、背が宗一郎さんより高くて、正統派イケメンだ。

なのに、私と微妙な距離をとりながら観光客を装って歩く彼は、意外に目立っていなかった。

気配を消すのがうまいみたい。
さすが、警察官。


新しくできた名古屋城の本丸御殿の前には、たくさんの人がいた。

広い庭園をぐるりと周り、名古屋城の金のしゃちほこを見上げる。

その間にツアーに参加しているジジババを全員確認。

うん、お城の階段を登った人もいるみたいだけど、皆元気そう。

良かった良かった。


「高浜さーん……」


声をひそめて、高浜さんに近づく。

彼は小さな売店の前にいた。 


「あの、少し休憩しようと思うんですけど……そのへんで、お弁当でも買ってきましょうか?」

「なんでも良ければ、俺が行ってきますよ」

「そんな、私が行きますよ」


そうして売店でおにぎりを選びはじめると、高浜さんがハッと息を飲む音がした。


「これは……」


彼が手に取ったのは、ご当地キャラ……名古屋なのになぜか置いてあった、近くの岡崎市のゆるキャラのマスコットたった。
 
漢字の「岡」に見立てた顔は、おかっぱみたいな髪に生気を感じさせない目、ネコみたいな口。

首から下は白一色の全身タイツに「崎」と書いてあるだけ。


「オカザエモンですね」


その珍妙なゆるキャラは、シュールすぎて、子供には人気がない。




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