この恋、国家機密なんですか!?


上賀茂神社につくと、そのにぎやかさに宗一郎さんは眉をひそめた。


「混んでるじゃないか」

「当たり前じゃないですか……」


だから今日は元旦だってば。
田舎の名もない神社だって、今日は混んでるよ。

京都最古の世界遺産の神社だもん、そりゃ人も多いでしょう。


「うむ、ここまで来たら腹を決めよう。行くぞ、唯」


……そこまでして……。

なんで初詣を思いついたんだろう、この人……。


「初詣なぞ、子供のとき以来だな……」


宗一郎さんはぶつぶつ言いながら、私の手を引き歩き出す。

参拝客の列に並んで、じりじり進む。

歩くというより、本当に遅い流れるプールに身をゆだねているだけな感じ。

ついさっきまで寒かったのに、途端にむしむしと熱くなってきた。


「正月から神頼みするやつの気がしれん……」


と言いながら、宗一郎さんはしっかりと私の手を、強くにぎっていてくれた。

人波に押されて、はぐれてしまわないように。

私の目の前では、涙目の小さな女の子が、ふわふわのコートを着て、お母さんに抱かれている。

その横にいる旦那さんとかわるがわる、女の子を抱っこしては、「もう少しだから」となだめられていた。


< 87 / 214 >

この作品をシェア

pagetop