Elma -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅰ-



「あっ…………ぶねぇ……。死ぬかと思った」



 呟いたラシェルの息が耳にかかる。

そこから熱が伝わるようにして、顔が一気に熱くなっていくのをメオラは感じた。



(やだ、なによこれっ……)



 なぜだか突然に熱くなる頬に戸惑うメオラをよそに、ラシェルはゆっくりと体勢を戻すと、メオラの体をそっと離した。

と思うと、今度はメオラの肩に手を置いて、ぐい、と引くと、ラシェルのほうに向かせた。



「な、なに……?」



 メオラは赤い顔をしながら、戸惑ったように訊く。するとラシェルは、メオラの目をまっすぐに見て、

「おれは、信用できないか」

 と、尋ねた。


その真剣な顔を見ていると、自然と顔の熱が引いていくのを感じる。



「………………できないわ」



 メオラはラシェルの目を見返して答える。



「そうか。なら、信用はしなくてはいいから聞いてくれないか」



「なに?」



「正直に言おう。リヒターやイロは、もし今後エルマが……不要になることがあれば、口封じにあいつを殺すつもりでいる」



 それはメオラでもわかっていたことだ。

エルマ本人も予測済みで、そうならないようにリヒターやイロの信用を得ようと頑張っている。

そしてメオラは、それでもリヒターたちがエルマを殺そうとしたときのために、毎日窓の花でラグに報告をしているのだ。


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