ラスト・ジョーカー



 エルが言うと、アレンがにこにこと笑顔を浮かべて、

「今日はミオちゃんの誕生日だから、お祝いだってさ」

 と答えた。



「えっ、本当!?」



 そんなめでたい席に自分がいていいのだろうか。


隊商の者たちが自分を恐れて、雰囲気を悪くしないだろうか。



 そんなエルの内心を見透かしたように、「大丈夫だろ」と、ゼンが言った。



「あいつら、もう酒しか目に入ってないし」



 なるほど。

言われてみれば、女たちは麻由良とミオの周りに集まって楽しげにおしゃべりをしているし、男たちはすでに酒に酔っていて顔が赤い。


だれもエルたちに気を留めなかった。



「せっかく麻由良さんがご馳走してくれたんだし、おまえも食っとけよ」



 と言いつつ、ゼンはもう食事に手を伸ばしている。



 そう言われても、料理がたくさんありすぎて何から手をつけていいのかエルにはわからない。



 固まっていると、「これ美味しいよー、エルちゃんさん」と言いながら、アレンが次々におかずをエルの取り皿に入れてくれた。



「ありがとう」と言って食べはじめると、どれも本当に美味しい。


料理の数が多すぎて、一皿に一口ずつ手をつけただけでお腹いっぱいになってしまった。


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