ラスト・ジョーカー



 満腹したエルがぼうっと座っていると、ワンピースの裾を誰かに引っ張られた。

視線を下げると、そこにいたのはミオだ。



「あ、ミオちゃん。お誕生日おめでとう」



 エルが笑って言うと、ミオも明るい笑顔を返した。



「ありがとー、おねえちゃん。あのね、ミオ、六さいになったよ!」



「そっか。よかったね!……あ、ごめんね? なにかあげられたらいいんだけど、あたし、あげられるようなものは何も持っていないの」



 持っているものといえば、着ている服とローレライの鱗、それからミオにもらった銀の鈴だけだ。

プレゼントを買うお金なども、もちろんない。



 申し訳なさそうな顔をするエルに、しかしミオは首を傾げて、

「え? もうもらったよ?」

 と言った。



「え……、いつ、なにを?」



「あのね、ひるま、ゼンおにいちゃんがおかしをふたつくれて、ひとつはおねえちゃんからだって」



 エルが驚いてゼンを見ると、ゼンは苦い顔で目をそらした。



「ゼン、本当?」



 と尋ねると、「いろいろ買うものがあったから、ついでだ」と仏頂面で答えた。



 その様子をアレンがにやにや顔で眺めている。



「……ゼン」



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