ラスト・ジョーカー
「腕に自信のある者は私と一緒に来い!」
どんな顔ぶれが麻由良についてくるのか確かめもせず、エルは駆け出した。
誰がついてこようと、関係ない。
その全員を守りながらミオを助けることが、自分にならできるとエルは信じていた。
エルの後にゼンも続いた。
狼より速いエルの足に、普通の人間がついていくのは不可能に近いが、それでもゼンは遅れずにエルに並んで走っている。
PKでなにか細工をしているのだろう。
出遅れた麻由良たちは、後ろから馬に乗って追いかけてくる。
馬の速度でならその気になればエルを追い抜けるはずだが、麻由良はそうはせず、エルの後ろを走っていた。
そのことに麻由良の信頼を感じ、こんな時なのにエルは嬉しくなった。
「おい」
隣を走るゼンが、突然、小声でエルに声をかけた。
「ん?」
「さっきみたいなこと、もう言うな」
意味がわからずに、エルが首をかしげてゼンを見返すと、ゼンは前を見たまま言った。
「自分のこと、『化け物』なんて言うな」
思いもしなかった言葉に、エルはきょとんとした顔をして、まじまじとゼンを見た。
ゼンはあの、この数日の旅の間にもう何度も見た、ばつの悪そうな顔をしている。