ラスト・ジョーカー



 ガランは頷き、しかし慌てて「あ、だが」と声を上げた。



「どうやってここから降りれば……」



 その言葉を聞いたエルが男をにらみつけると、男はぼそっと「エレベーターが、まだ使えんだよ」と言った。



「では、麻由良さん、ガランさん、お願いします」



「エル、あなたはどうするの」



 ゼンが落ちた場所へふらふらと歩いていくエルは、崩れた床の縁で足を止めて、麻由良に微笑みかけた。



「あたしは……ゼンを、探しに」



 言葉が終わると同時に、エルの体がふらりと傾いだ。


麻由良も、ガランも、ハッと息を飲んだ。



「エル……!」



 エルが、空に落ちていく。


青ざめて森を見下ろした麻由良は、目を見張った。



 落ちていくエルは宙でふわりと身を翻すと、鉄骨に手をかけてぶら下がり、また手を放す。


そうやってエルはゆっくりと降りていく。



 それを見て、麻由良はほっ息をついた。


そして、立ち上がると表情を引き締めた。



「皆、その男を〈トランプ〉へ連れて行こう。そして、〈トランプ〉局員に頼む。――ゼンを、助けてくれるように」


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