愛を知る小鳥
「はぁ、はぁ…」

完全に息の上がった美羽の体を引き寄せると、少しの隙間も作らないようにきつく抱きしめた。

「…来週、泊まりで出張に行くことになった」

「…え?」

興奮が収まらない頭ではすぐに言われたことを処理することができない。

「休んでた間に進めてた事業があってな。今回は俺だけで行ってくるよ」

「…そうなんですか。気をつけて行ってきてくださいね。まだ完全に治ったわけじゃないんですから」

「わかってるよ。お前こそ…」

そこまで言って言葉が途切れる。潤が言葉に詰まるなんて事はめったにないので美羽は訝しく思うが、黙って次の言葉を待った。

「…お前こそ、ちゃんと待ってるんだぞ」

「…え?」

「どこにも行くなよ」

その言葉にハッとする。彼は一体何を考えてる? 何か勘づいてることがあるのではないか。先程までとは違うドキドキが止まらないが、それを出さないように必死に取り繕った。

「何を言ってるんですか? 私はどこにも行きませんよ」

ニコッと笑う美羽の顔をじっと見つめながら、潤はゆっくりと口を開いた。

「…俺が帰ってきたら」

「え?」

「帰ってきたら、約束の旅行に行こう」

「…潤さん…」

「いいか、約束だぞ?」

あまりにも強い視線から目を逸らすことができない。足元からグラグラと揺れる気持ちと葛藤しながら、美羽は必死に微笑んだ。

「……はい」
< 231 / 328 >

この作品をシェア

pagetop