愛を知る小鳥
「頑張れよ」

「……あぁ…」

なんとか絞り出した声は少し震えているように思えた。



長い年月を経て、今ようやく雪解けを迎える_______



「せっかく来たのに、泣いてばかりでごめんなさい…」

ようやく泣き止んだ美羽は涙でくしゃくしゃになった顔で頭を下げた。

「いや、いいんだよ。潤が素敵なお嫁さんをもらったってわかって安心したよ。これからも潤を頼みます」

「そんな、それはこちらのセリフです! 潤さんはああ言ってましたけど、彼に救われたのは私の方なんです。潤さんに出会っていなければ、私は…」

そこまで話すと再び視界が滲んでくる。潤は美羽の頭を撫でると、美羽の代わりに口を開いた。

「まぁそういうわけで俺は元気にやってるから。まずは親父は病気を治すことに専念しろよ。…またゆっくり会いに来るから」

「あぁ、そうだな。かわいい孫に会うまでは死ぬわけにはいかんしな」

そう言ってイタズラっぽく美羽に微笑むと、美羽はボッと真っ赤になって俯いてしまった。

「…ったく。どこへ行っても結局このパターンかよ」

「ははは、本当に可愛らしいお嬢さんだな。大切にしてやれ」

「当然だろ? …じゃあまた来るから。母さんにもよろしく伝えといてくれ」

「あぁ、わかった」


互いの笑顔を見たのはいつぶりだろうか。

今日の気候に負けないほど清々しい気持ちがそれぞれの心を満たしていた。
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