愛を知る小鳥
そして同時に美羽のことも気になっていた。

自分に変な期待をもつような女だけは避けたいと美羽を選んだが、実際のところ潤に対して全く関心がなさそうだった。これほどまでに潔く興味を示さない女性に出会うことは珍しく、自分で望んで引き抜いたとはいえ、現状に驚いているのが正直なところだった。

仕事に関しては文句のつけようがないほど真面目に取り組んでいる。入社3年目とはいえ数少ない短大卒の立場で、周囲に全く引けをとらない仕事ぶりだ。
そして今時あり得ないだろうと言うほどの固いスタイル。眼鏡に黒髪をまとめただけ、おまけにパンツスーツときた。浮いた話が全くないというのは聞いていたが、むしろ自分から固いガードを作っているように見える。今日のパーティですらそのスタイルを変えようとしなかったことからも、そこは彼女の中で譲れない信念なのだろう。

そしてもう一つ気になる点がある。
それは何でもない触れ合いに異常に反応するということだ。
最初は照れもあるのかと思っていたが、様子を見ているとどうもそういう感じではないようだ。むしろなにかにひどく怯えているような…
仕事の時はあれだけ地に足がついて自分相手ですら物怖じしない発言だってしているというのに、突然今にも消えそうなほど儚く感じる。

そこで潤は何かのひっかかりを感じる。
浮いた話が全くないこと、女としてのスタイルを決して出さないこと、
そして触れられることに極端に怯えていること。

これは単なる偶然なのだろうか…?

そして先程見た美羽の住居。一般の女性とはあまりにもかけ離れた彼女の状況に、何か大きなものを抱えているのではないかと思わずにはいられなかった。
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