愛を知る小鳥
「はぁ、疲れたな…」

鏡に映る自分を見つめながら呟く。
あれからしばらくして常務も合流し、それから2時間程わいわいお酒を酌み交わして盛り上がり、先程ようやくお開きとなった。お店の前で各々解散となったが、美羽は一旦店に戻り、お手洗いを済ませて帰ることにした。

「疲れた…」

(…けど楽しかったな…)

これまでは極力避けてきた交流の場。たとえ参加したとしても決して中心には入ることなく、一定の距離感をもって接してきた。今日だって自分の歓迎会とはいえ、こんなに親しくする予定はなかったのに。
でも気がつけば自然と話の中に溶け込んでいる自分がいた。決して強引ではなく、あくまで自然に自分を輪の中に招き入れられていた。そして美羽自身もいつの間にかそれを心地いいと感じでいた。彼らと一緒にいるときの自分は自然体でいられたような気がした。そんなことは初めてだった。

これまでに感じることのなかった感情に驚く一方で、このままそうやって人と深く関わってしまうことに言いようのない恐怖を感じていた。

(駄目、駄目! 今日だけが特別だったんだ。明日からはまたいつも通りに…)

美羽は自分にそう言い聞かせると自分の頬を両手でパン!と叩いて自分を奮い立たせた。
< 57 / 328 >

この作品をシェア

pagetop