晩靄(ばんあい)
第3部

天使の家

地獄を走るドミトリーは、悪魔の天秤を執行した悪魔に出会った。
「君はなんて無鉄砲なんだ。」
ガブリエルはドミトリーを抱きしめた。
「悪魔のなのに、あなたはまるで神様だ。」
ドミトリーが呟くと、微笑みを交わした。
「地獄の裁きは受けなければならない。」
ガブリエルは目に涙を浮かべ囁いた。
ラファエルであるドミトリーは地獄の裁きを承けに赴いた。
「フィッシュの悪魔の天秤は執行された。
地獄に縛る理由はない。」
ガブリエルがラミレズにいい放った。
「大天使も随分落ちたね。」
ソフィアが笑いながらドミトリーを見た。
「フィッシュの天秤を勝手にやったのは問題だろう?あんたは天使だ。」
メルヴィルが肩をすぼめて言った。
「でも、堕天使だ。」
ガブリエルが腕を組んで言った。
「でも、天国に帰るんだろ?天使だ。」
ラミレズが食い下がった。
「悪魔の天秤なんだから、悪魔がやるべきだわ。」
ソフィアがラミレズに賛成した。
「いったん、サタンの仲間になった。
人を騙したし。」
「ガブリエル、天国に帰る悪魔がいるか?」
ラミレズはイスの背もたれにもたれ掛かり、
呆れたように両腕を広げた。
「神は悪魔を受け入れる。神に従くれた人たちや若い子なんかも来ていえば、赦される。」
ガブリエルは手を叩きながら言った。
「全く。」
やれやれとラミレズは頭を抱えた。
「ドミトリーは悪魔の天秤を放棄した。それは罪だ。」
メルヴィルがラミレズに代わって言った。
「神は真の愛を評価されるだろう。」
ガブリエルがドミトリーを庇護した。
「実力行使に出てもいい。」
ガブリエルは机に手を置いた。
「それなら、こっちも受け入れる。ただ、条件がある。フィッシュを追放してくれたなら、ラファエルを天国へ返そう。」
ラミレズはガブリエルの顔を覗き込みながら言った。
「追放…悪魔を地獄以外に何処へ追放するっていうんだ。」
ガブリエルはため息をついた。
「さぁそれが出来ないんなら、ラファエルは地獄からは永久に出られない。」
ラミレズは笑みを浮かべた。
「なら、フィッシュは天国へ連れていこう。

ラファエルがガブリエルに言った。
「えっちょっとそれはどうかな。」
ガブリエルは言った。
「僕が面倒を見るから。」
ラファエルがガブリエルに懇願すると、
ガブリエルは渋々承諾した。
「幸運を祈るよ。神は君を赦されるよ。」
ラミレズがラファエルに言った。
「そうだといいよ。」
ガブリエルが吐き捨てるように言った。

フィッシュは地獄を追放された。
しかし、フィッシュはことのほか大天使の光を気に入って天国を住みやすくした。
天使としての素質は彼にはなかったが、
ラファエルが彼を世話していたので、
フィッシュは器用に大天使の使いをする事が出来た。
地獄に戻ることはないだろう。


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