晩靄(ばんあい)
ソフィアは森の入り口で悪魔に出会っていた。
悪魔はドミトリーの借りを返すために
ドミトリーをドナの家まで導き、悪魔こそ怯えているのだと騙すように頼んだ。
フィッシュからの伝言だと言って、悪魔はドミトリーを悪魔の天秤に導いたがフィッシュは知らない所だった。
彼は、ドミトリーの真の霊の父であった。
ミハエルはドミトリーの周りを飛び、叡智を仰いだ。
ソフィアはフィッシュの使い魔だとすっかり信じこみ、芝居をうった。
フィッシュの使い魔はケルビムが化けたものだった。地獄まで行けたのは、ケルビムの光があったからだ。焔が穢れを焼き、ドミトリーを地獄の裁きから救いだしたのだ。
ラミレズは地獄の判事なので、ドミトリーの生涯を知っていた。ソフィアがドミトリーの生涯に出てきた時は、救われた思いだった。
フィッシュの代わりに悪魔の天秤を行った悪魔を捜すまで、フィッシュは悪魔の血で海を作った事だろう。
ソフィアはドミトリーに付きまとう未来を見る事が出来るはずだ。
悪魔の天秤をした悪魔を見た筈である、ソフィアから話を聞きたいが、なにぶんソフィアである、ただでは済まないだろうとラミレズはドミトリーの悪魔の天秤の失敗をだしにソフィアの家を取り上げると脅し、ソフィアを誘きだすのに成功した。
「フィッシュとの契約は済んだ事になったのか?」
メルヴィルがラミレズに訊くと、ラミレズは腕を組むと、
「済んだ。これでドミトリーは天に帰る事ができる。」
と呟いた。
「フィッシュがまだ知らないうちにもう一度契約をするか、フィッシュを地獄から追放するしかない。」
ラミレズが壁にもたれ掛かりながらため息をついた。
「フィッシュを追放したいね。」
メルヴィルは含み笑いをしながら言った。
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