蒼夏の刹那
許された時間と真実
病院に一夜だけ入院し、翌日退院した。あの人はギリギリまで病院に残ってくれて、その優しさが嬉しくも、苦しくもあった。



先生からちゃんと食べて寝るように言われ、看護師のお姉さんからも念を押すように言われて、苦笑いを浮かべるしかなかった。



病院の外へ出ると、快適な空間を懐かしく思う。



夏も後少しで終わりなのに、まだ蒸し暑い。



いつまでも入口で立ち尽くしているわけにもいかず、ここを離れようとすると――蒼がこっちに向かって走ってきた。



「蒼……?どうして?」



蒼は知らないはずなのに……



そんな事を思っていると、蒼はそのまま私に駆け寄り強く抱きしめた。



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