蒼夏の刹那
その瞬間、突風が吹き葉桜の葉を揺らす。



私の瞳にも涙が浮かぶ。



速水くんは肩を震わせ静かに泣いた。蒼のお葬式の時も、速水くんは泣かず――ただ泣きじゃくる私の傍にずっといてくれた。



どれだけの想いを今まで秘めてきたんだろう。



私がそうさせた……だから、今度は私があなたを守れるようになりたい。



「速水くん……ありがとう、一緒に、蒼の分まで生きようね」



速水くんの耳に届いたかわからないけど、想いは一緒だから、これから先は――






「夏も……あと少しで終わりだね……」






私は、速水くんが落ち着くまでずっと、その手を握りしめていた。






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