蒼夏の刹那
変わらない風景
日常を今まで感謝した事なんて一度もなかった。



生きているのが当たり前で、死をどこか特別視して、自分には遠いものだと思っていたかもしれない。



夜が来て、朝が来るのも当たり前だと思っていた。今は――全部が奇跡のように特別で、幸せな事だったんだと思える。



ずっと閉じられていたカーテンを開き、私は窓を開ける。



「今日は忙しいかも。お掃除して、それからお弁当作って、午後は蒼と速水くんとあの坂道で待ち合わせして学校の図書室に行くから」



早起きして、久しぶりに私は朝食を食べた。特別な調理をしたわけじゃないのに、今までで一番おいしい味噌汁になった。



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