蒼夏の刹那
朝食を食べ終わり後片づけをしていると、いつの間にかお母さんが起きてきて立っていた。



丁度洗い物も終わり蛇口を止める。



「……おはよう、お母さん」



ぎこちなく挨拶をすれば、長い沈黙の果てに――微笑んでくれた、蒼の笑顔と似たあたたかいものだった。



「おはよう藍花、もう大丈夫みたいね」

「うん。……速水くんが、いてくれたから」

「速水くんが……あのね、速水くん藍花が学校休んでる間、欠かす事なく家に来てくれて。藍花の様子だけ聞きにきてたのよ――なかなかできない事よね?」

「――っ」



私はまた泣きそうになる。



お母さんが今教えてくれなかったら、ずっと気づかないまま、また速水くんの優しさに甘えてしまっていた。



「……ほんとうに、そうだよね。速水くん、すごいなあ」



そう呟くと、お母さんは口にはせず頷いてくれた。



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