蒼夏の刹那
後片づけを終えた後、私は散らかった自分の部屋を片づけ始めた。



ゴミの山、とまではいかないけど酷いものだった。蒼が死んだ日から――この部屋も、私も、ずっと真っ暗な先の見えない日々を過ごしてきた。



「……長かったな、あの時はこんな日が来るなんて思ってなかったよ、蒼」



散らかった本や服を元の場所に戻し、いらないものは可燃袋に捨てていたら、あるものを見つけ手が止まる。



一枚の写真。



「あの坂道で撮った……蒼と速水くんと。普通桜の花が咲いてる時期に撮るけど、私たちにとっての桜は……」



蒼く澄んだ夏の空の、あの坂道の、葉桜。



今もこの胸には、写真に写した色褪せないあの日の蒼い空が広がっている。



多分この先も、ずっと褪せる事はない。



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