蒼夏の刹那
「蒼おはよう」

「おはようさん」



まだ人気のないバス停で、蒼は花のハンドブックを片手に持っていた。さすがに図鑑は厚いからやめたらしい。



「私は蒼と一緒で嬉しいけど……速水くんは、誘わなくてよかったのかな……?」

「ええんや、渚は」

「どうしてそう思うの?」

「藍花と渚の事ならわかる。どこにいても、な」

「……そっか」



胸が苦しくなる。



蒼が笑うから。



蒼と速水くんは、とてもよく似ている――まっすぐで、心が強いところ。



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