翼~開け放たれたドア~
そうなってもおかしくないくらい、春輝の過去はひどいもんだ。

だけど、春輝が一番嫌っているのは人じゃないんだ。

あいつは──

「雷、雷」

「ん?なんだ?春輝」

目の前に、いつの間にか空夜からおりた春輝が俺に呼びかけたことで、思考が遮断される。

春輝は俺の服の裾を掴み、くいくいと引っ張る。

……仕草がいちいちかわいいんだよなぁ。

なんつーの?母性本能をくすぐられるっていう感じ?

俺はふっと笑って、春輝の頭を撫でる。

それに少しだけ頬を緩めた春輝が、俺の手にすり寄ってくる。

あ、笑った…。

「春輝が笑った…!?」

「いっつも無表情か苦しそうな顔しかしねえのに…」

「あいつもあんな顔すんだな」

「へぇ…さすが雷さんだね」

本田飛鳥、松本蓮、久保秋人、品川直が、春輝を見て話していた。
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