明日、嫁に行きます!
その場に足を縫い止められ惚けていた僕に、祖母はちらりと冷たい双眸を向けて仄めかすように呟いた。
「総一郎。追わなくて良いのかしら?」
僕の心の内を見透かした彼女の口からそんな言葉が漏れる。
「あの子、私はとても気に入りました。あの純粋な眸は私の亡き夫にそっくり。夫もとても素直で愛らしい人でした。……総一郎。寧音ちゃんの弱みを掴んで、すぐに囲っておしまいなさい」
「ええ。それが最善のようだ」
僕は頷き、お祖母さんの提案に同意で返した。
「お祖母さん。徹に詳細を伝えて、斉藤家を調べておくよう伝言を頼みます」
「ふふ。任されたわ。いってらっしゃい」
祖母の黒く染まった嫋《たお》やかな笑みを背に、僕は彼女の後を追った。