明日、嫁に行きます!
眉間にグッと皺が寄る。
彼女はルネに間違いない。世にも珍しい紫の瞳など他にない。
それに12年前の面影を色濃く残している。
間違えようもない。
けれど。
「そう。それはどうも、ありがとう」
釈然としないまま祖母を救ってくれたことに礼を言う。
そうしたら、彼女の顔に激しい怒気が浮かんだ。
「心配なんて言うんだったら、ちゃんとお婆さんの傍にいてあげなさいよ。そもそもは、貴方の取り巻きの女の人に突き飛ばされたんだから!」
僕はギョッとした。
怒りでキラキラと輝く瞳に目を奪われる。
出逢って間もない祖母のためにここまで怒りの表情を見せる彼女から目が離せない。
けれど今、激しく胸の内にわき上がるこの感情は、彼女に惹かれる純粋な質のものではなかった。
――――目の前のこの女を、僕の腕で屈服させてみたい。
それは、情欲の混じった昏い支配欲だった。
「お婆さん、私はこれで失礼します。お話しできて、楽しかったです」
何かを察したのか、彼女はその場を去ろうとする。
ルネを引き留めようとした声が喉の奥で詰まった。
あっと声をあげそうになる。僕の眸が彼女に釘付けになる。
彼女は、お祖母さんに向けて微笑んだ。
その笑みはとても優しく、慈愛に溢れたもので。
12年前、僕に見せてくれたものと全く同じ天使の笑みそのものだった。
この瞬間、僕の心は完全に、彼女に奪われてしまった。