明日、嫁に行きます!

 シャワーを浴びながら朝食の献立を考える。
 幸いあの段ボールには食料品が入っていたため、朝食作りには間に合いそうだ。
 買い出しに行かないとダメだなって思っていたから手間が省けた。
 身体の汚れを綺麗に洗い流した私は、乾燥機からホカホカになったバスタオルを取り出し、濡れた体を拭く。
 部屋着に着替え、長い髪をドライヤーで乾かしながら、今後のことに思いを馳せた。

「鷹城さん、なんで私にしたのかな」

 嫁候補なんて、それこそ腐るほどいるはずだ。
 どこそこのご令嬢とか、美人モデルとか、芸能人とか。
 かたや私は、確かに綺麗だの美人だのと騒がれることは多々あるけれど、それを取っ払ったら、ただの生意気な小娘でしかない。

「裏に何かあるんじゃない?」

 そう勘ぐってしまうほど、不自然極まりない話だと思うんだ。

「……鷹城さんってば、実はゲイとか」

 そんなわけないか。と、笑う顔が引き攣った。

 ――――世間の目を誤魔化すための偽装結婚。

 うん。この設定、ありそうだ。
 だってお婆さん、彼が女性不信とか言ってたし。
 ハッと目を見開く。
 小刻みに震え出す唇を掌で覆い隠した。
 私は今、大変な事実を知ってしまったのではないか。

 ――――鷹城さん、ゲイなんだ。

 そう思ったら全て辻褄が合う。
 意のままに出来る女(私)を妻に仕立て上げることによって、大会社の社長である彼が、実はゲイである事実を社会的に隠蔽することが出来る。妻を娶ることで、お祖母さんも安心するだろう。一緒に住むと言いながら、彼は私に手を出さないとまで約束した。それは、私に全く興味がないということに加え、女そのものに興味がない、故に、食指すらのびないからじゃないか。
 そう考えると、彼がゲイ以外の何者でもないと思えてくる。私の中で、予想が確信に変わった瞬間だった。

「誰がゲイですか」

 背後から聞こえた地を這うような不機嫌な声に「ひぃ――っ」と仰け反り叫んでしまう。

 ――――ゲゲゲゲイ様登場!?

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