明日、嫁に行きます!
ああ―――っ、怖かったっ!!
駅に着いて、人が沢山いることに心からホッとする。
息を弾ませ大きく肩で息を吐く。バクバクと音を立てる心臓を両手で押さえ、落ち着かせるために深呼吸する。
もう大丈夫なんだとやっと人心地ついて、安堵に泣きそうになった。
その時、またポケットでスマホが震え出した。
先ほどの恐怖で萎縮していた心が、人恋しさに速攻で通話ボタンを押してしまう。
『寧音ッ! 今、どこですか!!』
聞こえてきた鷹城さんの声に、こんなに安心するなんて。
怖かったという思いが口からあふれそうになったけれど、それをグッと耐えた。
「……今ね、駅に着いたとこ」
『勝手な行動ばかり……! 何かあったらどうするつもりなんですか!』
「……大丈夫、なにもないよ。なにもあるわけないじゃん。心配性だなあ」
『すぐに向かいますので大人しく待ってなさい。わかりましたね!?』
「はいはい。大人しく待ってるよ」
通話を切って、はーっと疲れを吐き出すように息をする。
時間にして、約15秒ほどだった。
「寧音!」
聞こえてきた声にギョッと目を向けた。
――――ええっ、なんで!?
キキッと目の前に止まったグレーの車から降りてきたのは、鷹城さんで。
――――す、すぐに向かうって、いくらなんでも早すぎでしょ!? 今、電話切ったとこなんだけど!
激しい焦燥の滲む顔を私へと向ける鷹城さんは、風を切りながらこちらへと向かってくるんだけど。彼が纏う不穏な空気に、素直に駆け寄ることが出来なくて、足が地面に縫い止められたように固まってしまう。
所在なげに佇む私を、鷹城さんはいきなり抱きしめた。
びっくりしたけど、それ以上に安心してしまって。
抱きしめられるまま、私は彼に身体を預けた。
「……心配しました」
囁かれる安堵の声。
鷹城さんを心配させてしまったんだ。
私は彼の胸に顔を埋めて、「ごめんなさい」小さく呟いた。
そうしたら、いきなり鷹城さんの指先が私の顎を掴み、クイッと持ち上げた。驚く私の目が鷹城さんを捉える。私の姿が映り込む彼の双眸に剣呑な光が宿り、スゥッと細くなる。顎に触れる彼の指先が、流れるように私の頬へと移り、ゆるりと撫でた。
「……頬。誰に殴られたんですか」
その問いに、思わず肩が揺れてしまった。
しまった! 一目で殴られたと分かってしまうくらい、頬が赤くなってるのか。
サーッと血の気が引いてゆく。