ヒカリ
りなはクラスの中で、懸命におりがみを折っている。
額に汗をかいている。
拓海は自分のスモッグのポケットからハンドタオルを出し、りなの頭をふいてやった。


「何を折ってるの?」

「飛行機」

「遠くに飛ぶかな?」

「うん。拓海先生も作って」
りながブルーの折り紙を手渡した。
拓海はりなの隣に座り、飛行機を作り出した。

「先生、上手」

「りなちゃんのも、かっこいいよ。おりがみはね、こうやって、角と角をぴったんこってすると、うまく折れるんだよ」

「でも、りなできないよ」

「大丈夫。上手にできてる。練習すればもっと上手にできるから。ほら」


拓海は折り上がった飛行機を、部屋の中に飛ばした。


飛行機はふわりと舞い上がり、広いクラスの中を滑るようにとんだ。


「すごい」
りなが目を丸くする。
「りなも」


りなは自分の飛行機を力一杯投げる。
赤い飛行機はくるくると回って、すとんと床に落ちてしまった。


「飛ばないよ」

「飛ばすときに力を抜いてごらん。投げるんじゃなくて、滑らすみたいに」
拓海は床に落ちたりなの飛行機を拾い、りなに手渡す。


りなは飛行機をもう一度飛ばした。

今度はそっと、空気にのせるみたいに。


「ほら、とんだ」

拓海はりなの顔を見る。
りなの顔は、歓びで紅潮している。

飛行機はさっきよりもずっと高く飛び、静かに床に着地した。


「りなもお空飛びたいな」
「先生も」
拓海はりなの頭をなで、そう答えた。

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