ストーキング☆ロマンス
【1】
――ガコン。
勢いよくそれは落ちてきた。眠気覚ましのコーヒー。
温かいというより熱いそのフタを開けると、小気味良い音が辺りに響いた。
「はあ…」
一口飲んで顔を上げる。危ない、目的を忘れるところだった。
私は大きなガラスのドアを見つめる。青いラベルの、爽やかなコンビニエンスストアの。

……今日もいる。

レジに立つ青年を確認できただけで、私はほっとしてしまう。
その人の名前は、立岡と言うらしい。この間会計のときに名札を確認したから確実だ。
一目惚れなんて信じない、絶対信じない主義なんだけど…。
「なんか、気になるんだよね…」
私は小さくため息をついた。
夜10時。ここは人通りも多く、夜でも明るい場所だ。
だからって安全なところでは決して無いんだけど。
女子高生がこんなところでウロウロしてたら、すぐ補導されてしまいそうだ。
だから私は、黒いコートに黒い帽子、黒いブーツに黒い手袋という格好をしている。
これなら夜に溶け込めるような気がして。
今日もコンビニの中に入ったりはしない。だって、目的は立岡さんを見ることだから。
「これじゃあ、ホントにストーカーだよぉ」
私はまたため息をついた。
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