腹黒王子に囚われて
 
一口すくって、さんざん息をふきかけて冷ましたあと、ぱくっと口に入れた。

口に入れた瞬間、瑛太の目が大きく開き……



「……うまい…」



と言ってくれた。


「よかった」
「ただの味のないおかゆなのかと思った」
「見れば分かるでしょ。色ついてんじゃん」
「そうだけど……」
「……食べやすいでしょ?」
「ああ」


あたし自身、塩味しかないおかゆは苦手で、食べられても少量くらい。
だけどほんのちょっとだけ、ダシのきかせた雑炊は、胃にももたれないし、食欲がそそる。

だから風邪を引いた時は、いつもこれだった。



「うまかった。ごちそーさん」
「ん」


結局、食欲がないって言ってた割には完食していて、空っぽになった器を見て微笑んだ。


「薬。飲んどきなよ」
「ああ」


薬を促し、器をキッチンへ戻した。
 
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