腹黒王子に囚われて
「……うるせー。
いちいち言うな」
「何勝手に抱きしめておいて、緊張してんの」
「葵だって、ドキドキしてるくせに」
「……」
耳元で囁かれる言葉は、余計にドキドキさせて、その言葉を否定できない。
あたしたちはいったい、何をやってんだろう。
偽りの恋人で
そこに想いなんかないのに
こうやってくっついてはドキドキして……。
「葵」
「……何?」
「こっち向いて」
「無理」
今は振り向きたくない。
だって多分あたし……
「あ……」
「……可愛すぎ」
「……」
気持ち悪いくらい、
顔が真っ赤だ。