ヴァニタス
ムトウが画家として活躍していることを知ったのは、6年前。

本屋で見かけた美術関係の雑誌からだった。

その表紙をムトウが飾っていたことから、私は彼が画家になったことを知った。

雑誌の関係者や美術の関係者をたどりながら、私はムトウを探し続けた。

そして、やっと見つけた。

この町にムトウがいることを突き止めた。

この町に住んで、絵を描いていることも知ったわ。

ずいぶんと時間がかかってしまったけど、私はすぐさまムトウに会いに行ったわ。

ミュージシャンとしてまた世界を羽ばたいて欲しいって、ムトウにお願いした。

私のお願いを、ムトウは首を横に振って断った。

“もう2度とその世界に戻らない。

自分は絵を描いて、この町で死ぬまでの時間を過ごす”

そう言ったムトウの顔は、私が知らない彼の顔だった。

 * * *
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