ヴァニタス
クロエさんに言われ、私の心臓がドキッと鳴った。

「その様子だと、当たりのようね」

イタズラっ子のように笑ったクロエさんに、私はハンカチを顔に当てた。

「隠さなくても結構よ。

人を好きになることは決して悪いことじゃないわ」

笑いながら言ったクロエさんに、
「――く、クロエさんは…」

私は話しかけた。

「クロエさんは、武藤さんのことが好きだったんですか?」

そう質問した私に、
「残念だけど、私がムトウと出会った時、私にはすでに夫がいたの。

彼に恋愛感情を抱いたこともなければ、感じたこともないわ」

クロエさんは笑いながら言った。
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