ヴァニタス
――もし目が覚めた時、夢だったらどうしようと私は思った。

満月が輝いているこの夜に。

月明かりが部屋を照らしているこの夜に。

その光が武藤さんの顔を青白く輝かせているこの夜に。

好きな人に抱かれたことが夢だったらどうしようと、私は不安に思った。

私の名前を呼んでいること。

私と手を繋いでいること。

私と躰を重ねていること。

これらの出来事が夢だったらどうしようと、私は不安に思った。

でも…今私の身に起こっていることが夢だったとしても、私は嬉しいって思ってる。

好きな人に大切にされて、好きな人に抱かれているこの出来事が夢でもいいって思ってる。
< 238 / 350 >

この作品をシェア

pagetop