ヴァニタス
面会時間が終わりに近づいた頃。

「じゃあ、また明日もきますね」

「気をつけて帰ってね」

武藤さんに手を振られて、私は病室を後にした。

病室を後にすると、ナースセンターに足を向かわせた。

私はナースセンターの近くにある公衆電話を指差すと、
「すみません、少しだけお電話をしてもよろしいでしょうか?」
と、看護師さんに聞いた。

「ええ、いいですよ」

看護師さんは首を縦に振って答えた。

「10円玉10枚で終わるかな?」

私は小さく呟いた後、ポケットから10枚の10円玉を出した。

先ほどトイレに行くついでに売店で100円玉1枚と両替してもらったのだ。
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