ヴァニタス
ガチャンと、受話器に公衆電話を置いた。

「あっ、もう10円がない…」

10枚あったはずの10円玉はもうなかった。

それくらい、私は話しこんでしまっていたらしい。

私は涙をふいて、周りに視線を向けた。

「すみません、お騒がせしました」

そう言った後、私を不思議そうに見ている人たちにペコリと頭を下げた。


翌日。

その日も私は武藤さんの病室へ行く前に、売店で100円1枚を10円玉10枚に両替をした。

武藤さんの病室のドアを開けると、
「武藤さん」

ベッドのうえに腰を下ろしている彼がいた。
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