ヴァニタス
その日も武藤さんの病室を後にすると、ナースセンターの近くにある公衆電話でまた両親に電話をかけた。

「もしもし?」

電話に出たのは母だった。

「私、果南です」

自分の名前を言った私に、
「果南ね。

昨日はお父さんがほとんど話していたようなものだったから、また果南の声が聞けて嬉しいわ」

母が嬉しそうに言った。

「お父さんはいるの?」

そう聞いた私に、
「お父さんなら、今散歩に出かけているわ」

母が答えた。

先に父よりも、母に武藤さんのことを話した方がいいかも知れない。

そう思った私は、母に武藤さんのことを話した。

「そうなの…。

果南は今、その武藤さんって言う方とおつきあいをしているのね」

母は納得したと言うように言った。
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