ヴァニタス
肌を暑く照りつけていた太陽が優しくなり、冷たい風が吹くようになった日々に秋の訪れを感じた。

ステンドグラスのマリア像が純白のウエディングドレスに身を包んだ私を優しく見下ろしていた。

祭壇の前に、純白のタキシード姿の武藤さんが立っていた。

今日は私と武藤さんの結婚式だ。

私たちの結婚式に参加している人は誰もいなかった。

つまり、私と武藤さんの2人だけの結婚式だ。

赤いじゅうたんのうえを父と腕を組んで、ゆっくりと武藤さんに向かって歩いた。

少しずつ、武藤さんとの距離が近くなる。

武藤さんとの距離がゼロになった時、父は私の手を離した。

私は武藤さんの前に立った。

「――果南」

武藤さんが私の名前を呼んだ。
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