ヴァニタス
桜の下で誓ったこと
空気の冷たさを肌で感じて、私は閉じていた目をゆっくりと開いた。

鉛筆を動かしている音が聞こえる。

「――んっ、武藤さん…?」

私のそばにいるであろう夫の名前を呼んだら、
「ああ、起こしちゃった?」

スケッチブックと鉛筆を持った武藤さんと目があった。

私が目を覚ますまで絵を描いていたらしい。

武藤さんの格好は上は裸だけど、下はズボンを履いていると言うおかしな格好だった。

そう言っている私の躰には毛布が巻かれていた。

武藤さんとさっきまでそう言うことをしていた証拠だ。

「寒くないですか?」

私は武藤さんに聞いた。
< 325 / 350 >

この作品をシェア

pagetop