ヴァニタス
この部屋には暖房器具が置いていない。

外では強い北風が吹いていて、ガタガタと窓を大きく揺らしている。

下はズボンを履いているから寒くないかも知れないけど、上は何も身につけていないから寒いはずだ。

「寒くないよ。

むしろ、まだ暑いくらい」

武藤さんは笑いながら私の質問に答えた。

「暑いって…」

少し呆れながら、私は武藤さんの手の中にあるスケッチブックを覗き込んだ。

「なっ…!?」

そこに描いてあった絵に、私は自分の顔が赤くなって行くのがわかった。

「武藤さん、その絵って…?」

「えっ、見ちゃったの?」

武藤さんは隠す必要がないと言うように私にスケッチブックを見せてきた。
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