ヴァニタス
私の頭の中を読んだと言うように、
「俺はね、元気に生まれてきてくれたら性別はどっちでもいいって思っているんだ」
と、武藤さんが言った。

「病気が子供に遺伝しなければ、俺はそれでいいって思ってる」

「武藤さん…」

そうか…。

病気のこともあるから、そんなことを言ったんだ。

「――武藤さん…」

私は武藤さんの名前を呼ぶと、彼の首の後ろに両手を回した。

武藤さんはそれに答えるように、私の背中に自分の両手を回した。

「今でも、俺は夢を見ているんじゃないかと思うんだ。

愛する人に出会って、愛する人と結婚して、愛する人と子供を儲けた――それらの出来事が俺の都合のいい夢なんじゃないかって思っているんだ。

今の今まで、ずっと1人で生きてきたから」

武藤さんが言った。
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