ヴァニタス
乾いた音が耳に入ったのと同時に、
「…誰に?」

彼が止めたと思ったら、驚いたと言うように聞き返した。

えっ?

私も抵抗を止めると、彼の顔を見た。

彼の顔には赤い手形がついていた。

それを見た瞬間、気づかされた。

私、この人の顔をたたいちゃったんだ…。

抵抗だったとは言え、見ず知らずの人の顔をたたいてしまった。

「あっ…」

その事実に震えている私に、
「俺が誰に教える、って?」

彼が不思議そうに質問してきた。
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