ヴァニタス
そうだ…。

私とこの人は、初対面だ。

たった今この場所で会ったんだ。

だから、彼が知っている訳ないじゃない。

そうだ、そうだよ…。

自分がしていたとんでもない勘違いに、私は目をそらした。

男の息を吐く音が聞こえた。

こんなにも近くで人の呼吸を聞いたのは、今日が初めてだった。

怒ってるよね…。

抵抗だったとは言え、顔をたたいちゃったうえに、勝手に勘違いもしたんだから、怒っているのも当然のことだよね。
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