夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「そうだね。恐らく、クロさんは過去に女性にこっ酷く振られたか、女性に苛められたかして、軽い女性恐怖症になっているのかも知れない」
 「女性恐怖症、ですか?」ユラさんは首を傾げる。「そんな感じは、しませんでしたけど」
 「それはそうだろうね。飽くまで、わたしの勝手な想像なんだけど、トラウマになった女性と同じ様な女性だけを畏怖しているのだと思うの。そして、シロさんはその女性とは正反対だった」
 「成る程。だから、クロ氏はシロさんに好意を寄せたのですね」
 「正反対だから、ですか?」
 「まあ、わたしが勝手にそう思ってるだけだけどね」
 ヒロコは日本酒を呷った。
 「そうですよ。ユラさん。それに、ぼく達があれこれ考えても、詮のないことです。後は見守るしかないでしょう」
 「それもそうですね」
 ユラさんは頷いて、破顔一笑した。

 「さて、そろそろですか」
 ぼくは、ユラさんを見やった。
 ユラさんは頷くと、携帯電話を取り出し、電話を掛ける。
 ぼくとヒロコは、その様子を見守りながら、日本酒を呷った。
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