夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「うーん。初めて会ったのは、大学の呑み会だったな。確か」
 「お二人らしい出会いですね」
 ユラは笑いを押し殺しながら言った。
 「まあね。っと酒が切れたな」ヒロコは空の紙パックを軽く振る。「ロンドで呑み直すか」

 ―という訳で、ユラはヒロコと一緒にロンドにやって来た。
 ロンドには、予想通りの先客がいた。
 勿論(もちろん)、カドカワである。
 カウンターで呑んでいたカドカワを、いつもの座敷席に呼び寄せて、三人で呑むことになった。
 ユラと向かい合う形で、ヒロコとカドカワが並んで胡座(あぐら)をかく。
 取り敢えずということで、日本酒を四合注文し、お猪口で乾杯をした。
 「しかし、珍しい組み合わせですね」
 カドカワは、自分のお猪口に手酌をしながら言った。
 「フフッ。実はね―」
 ヒロコは今日の出来事を、カドカワに話した。
 「それでですね」ユラもお猪口に手酌をする。「ヒロコさんには、もう聞いてもらったのですが―」
 ユラは、自分の中学生の頃の話をカドカワにも話した。
 「そうでしたか。そんなことが」
 カドカワはお猪口を空け、手酌をする。
 「ええ―」
 と頷いた時、ユラは忘却していた中学生の頃のことを思い出していた。
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