夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「最初は三人で呑んでたんだけど、途中で、『ちょっと買い出しに行ってくる』って言って、出て行きやがった訳よ。だから仕方なく、彼の友達と呑んでたら、その友達が急に眠り出しちゃって、こっちはどうしたらいいのか解んない。暫く一人で呑んでたけど、一時間以上経っても一向に帰ってくる気配がない。電話もつながらない。ないない尽くしって感じになって、むかついたから、その友達をほったらかして出てきたって訳」
 「つまり、三人で呑んでたら、一人いなくなって、一人眠ってしまったから、帰ってきた、と」
 「そう。そうなのよ。人をしつこく誘っといて、ほったらかすだなんて、もう信じられない!」
 「確かにそいつは酷い」ヒロコはリョウコさんに日本酒を注ぐ。「そんな身勝手な奴は忘れて、今夜は呑もう」
 「そうね」吐き出してすっきりしたのか、リョウコさんは微笑を浮かべる。「ありがと」
 「あのー」ぼくはリョウコさんに向かって、口を開いた。「一つ聞いてもいいですか?」
 「何?カドカワさん」
 「もしかして、その友達って人と自分のグラスを交換したりしませんでしたか?」
 「えっ?どうだったかしら―」
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