夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「呑み過ぎたかな」
 ヒロコは一人呟き、コーヒーを飲み終えた。
 気分を切り替える為に、シャワーを浴びる。
 シャワーでさっと寝汗を流すと、冷蔵庫から10秒チャージゼリーを取り出して、30秒ぐらい掛けて啜った。
 何か忘れているような気がする―そう思いつつも、ヒロコはぼんやりとテレビを眺める。
 毎日垂れ流される膨大な情報。だが、報道しているのが人間である限り、少なからずベクトルがかかっている。それを見極め、有効に活用する為には、飽くまで傍観者に徹し、他の可能性の追求を忘れてはならない。
 と言ったのは誰だったか?ヒロコはそんなことを考えていた。
 ヒロコに言わせれば、少しひねくれているだけである。今日の常識は明日の非常識―とは、ヒロコがそのくどい言い回しを略したものであった。
 「ん~」
 ヒロコはテレビを消して、大きく伸びをした。
 動きやすいラフな服に着替えると、散歩に出掛けようと携帯と財布に手を伸ばした。
 「ん?」
 携帯の画面に、メールの受信を伝えるメッセージが表示されている。
 ヒロコはメールを読んでみた。
 メールの送り主は、ヒロコの受け持っている生徒で、生徒会長も務めていたことがある優等生だった。
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