夜明けのコーヒーには 早すぎる
 ぼくの言葉を聞いた後、ヒロコは暫し考え込んだ。
 そして、「朝まで大丈夫?」とぼくに言った。
 ぼくはゆっくりと頷く。
 「よしっ!」
 ヒロコは気合いを入れると、店員さんに焼酎を注文した。どうやら、余程デリケートな問題らしい。
 「で、何があったのですか?」
 ぼくは冷酒をちびり。
 「実は―」ヒロコは言葉を区切り、ぼくの冷酒を呷った。「告白、された」
 「告白?ヒロコが告白されて、困る相手というのは、もしかして―」
 「ええ」ヒロコは頷く。「生徒なの」
 「それはまた、難解な問題ですね」
 「でしょう?」ヒロコは届いた焼酎をちびり。「わたし、一体どうしたらいいの?」
 「ふむ」ぼくは顎を擦る。「とにかく、詳しく話して下さい」
 「ええ」ヒロコは頷いて、事の詳細を語り出す。「今日、その生徒が遊びに来た時のことなんだけど―」
      ※
 少し時を遡り、その日の朝。
 ヒロコは10時過ぎに、目を覚ました。
 大きく欠伸をし、目尻を擦りながらベッドから這い出る。胃がもたれているので、濃いめのコーヒーを淹れて頭が覚醒するのを待つ。
 コーヒーを啜りながら、ヒロコは昨夜のことを思い出した。
 昨夜は休日の前日ということもあり、少々呑み過ぎたのだった。
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